2025年12月、私たちはジェンダー平等の実現という世界共通の目標に対して、どのような場所に立っているのでしょうか。
持続可能な開発目標(SDGs)の目標5にも掲げられたこのテーマは、単なる理念ではなく、社会の持続的な発展に不可欠な要素として認識されています。

しかし、その道のりは決して平坦ではありません。
特に日本においては、多くの課題が山積しており、国際社会から厳しい目が向けられているのが現状です。

毎年、世界経済フォーラム(WEF)が発表する「グローバル・ジェンダー・ギャップ報告書」は、各国のジェンダー平等の達成度を測る重要な指標です。 2025年6月に公表された最新のレポートは、日本の現在地を改めて浮き彫りにしました。

この記事では、2025年のジェンダーギャップ指数の詳細を分析し、日本の国会で見えた法整備の進展という「希望」と、依然として残る根深い「課題」の両側面に光を当てます。
そして、ジェンダー平等な社会を実現するために、私たち一人ひとりが何をすべきかを考えていきます。

2025年ジェンダーギャップ指数に見る日本の「光と影」

2025年の日本のジェンダーギャップ指数は、私たちの社会が抱える矛盾を明確に示しています。
一部に進展が見られるものの、全体としては依然として大きな課題を抱えている状況です。

総合順位は118位で停滞 – G7最下位の現実

世界経済フォーラムが2025年6月に発表した報告書によると、日本のジェンダーギャップ指数の総合順位は、調査対象148カ国中118位でした。 この順位は前年と変わらず、先進7カ国(G7)の中では最下位という不名誉な状況が続いています。

総合スコアは0.666(1が完全な平等)で、前年の0.663からわずかに改善したものの、世界平均と比較すると依然として低い水準にあります。 この数字は、日本のジェンダー平等への取り組みが、国際的なペースから遅れを取っていることを示唆しています。

経済分野のわずかな希望と、政治分野の深刻な課題

ジェンダーギャップ指数は「経済」「政治」「教育」「健康」の4つの分野で評価されます。 日本の状況を分野別に見ると、その評価は大きく分かれます。

  • 経済分野(112位): スコアが前年の56.8%から61.3%に上昇し、順位も120位から改善しました。 これは、女性の労働参加率の上昇や管理職比率の増加、所得格差の縮小などが背景にあります。 長年の課題であった経済分野でのわずかな前進は、一条の光と言えるでしょう。
  • 政治分野(125位): 最も深刻なのが政治分野です。 順位は前年の113位から大きく後退しました。 これは、2024年10月に発足した石破茂内閣の女性閣僚が2名(10%)にとどまり、それ以前の5名(25%)から大幅に減少したことが大きく影響しています。 国会議員の女性比率も国際的に見て極めて低い水準であり、日本の総合順位を押し下げる最大の要因となっています。
  • 教育分野(66位)・健康分野(50位): この2分野では、日本は引き続き世界トップレベルの平等性を達成しています。 これは、識字率や就学率、平均寿命などにおいて男女間の格差がほとんどないことを示しており、日本の教育制度や医療へのアクセスの公平性が高く評価されている結果です。

世界全体ではジェンダー平等達成に123年?

世界経済フォーラムは、現在のペースでは世界全体でジェンダーギャップが完全に解消されるまでに123年を要すると予測しています。 この壮大な目標達成に向けて、日本が果たすべき役割は非常に大きいと言えるでしょう。

2025年の国会で見えた「希望」:法整備の進展

日本のジェンダーギャップは依然として大きいものの、2025年の国会では、その格差是正に向けた重要な法整備の動きが見られました。
これらの進展は、未来に向けた確かな「希望」と言えます。

女性活躍推進法の改正 – 企業の取り組みを加速させるか

2025年6月、改正女性活躍推進法が成立しました。 この改正は、企業のジェンダー平等への取り組みをさらに促すことを目的としています。
主なポイントは以下の通りです。

改正のポイント内容
情報公表義務の拡大これまで従業員301人以上の企業に義務付けられていた「男女の賃金差異」の公表が、101人以上の企業にも拡大される見込みです。
公表項目の必須化「女性管理職比率」などの情報開示が必須項目となる方向で検討が進められています。
法律の延長2025年度末までだった法律の期限が、さらに10年間延長される方針です。

これにより、企業の透明性が高まり、女性登用や待遇改善に向けた自主的な取り組みが加速することが期待されます。
投資家や求職者が企業を選ぶ際の判断材料ともなり、社会全体で企業のジェンダー平等を後押しする流れが強まるでしょう。

28年ぶりの審議入り「選択的夫婦別姓」の行方

1997年以来、実に28年ぶりに「選択的夫婦別姓」制度に関する法案が国会で本格的に審議されました。 立憲民主党、国民民主党、日本維新の会からそれぞれ法案が提出され、各党の考え方の違いはありつつも、長年停滞していた議論が大きく前進したことは画期的です。

内閣府の世論調査(令和3年度)によると、選択的夫婦別姓制度の導入に「賛成」または「どちらかといえば賛成」と答えた人は6割を超えており、国民の意識と法制度の間に乖離が生じている状況がうかがえます。

2025年の国会での採決は見送られ、秋の臨時国会で継続審議となりましたが、経済界からも早期実現を求める声が上がるなど、社会的な機運は高まっています。 個人の尊厳やアイデンティティに関わるこの問題が、多様な家族のあり方を認める社会への転換点となるか、今後の動向が注目されます。

婚姻の平等(同性婚)やトランスジェンダーの権利に関する法案提出の動き

2025年6月には、立憲民主党などから同性婚を法制化する「婚姻平等法案」や、トランスジェンダーの性別変更要件を緩和する「GID特例法改正案」が国会に提出されました。 同性婚をめぐっては、全国の裁判所で「違憲」または「違憲状態」とする司法判断が相次いでおり、立法府である国会の対応が問われています。

これらの法案は、性的指向や性自認にかかわらず、誰もが自分らしく生きられる社会の実現を目指すものです。
議論はまだ始まったばかりですが、多様性を尊重する社会の実現に向けた重要な一歩として、今後の審議に大きな期待が寄せられています。

残された根深い「課題」:ジェンダー平等を阻む壁

2025年の国会で法整備の進展という希望の光が見えた一方で、日本のジェンダー平等を阻む根深い課題は依然として存在します。
これらの壁を乗り越えるには、法制度の整備だけでなく、社会構造や人々の意識変革が不可欠です。

政治分野における女性リーダーの不足とクオータ制導入の議論

日本のジェンダーギャップ指数において、政治分野のスコアが極端に低いことは最大の課題です。 衆議院の女性議員比率は約1割、参議院でも約2割強にとどまり、意思決定の場に多様な民意が反映されにくい構造になっています。

この状況を打破するため、候補者や議席の一定割合を女性に割り当てる「クオータ制」の導入を求める声が高まっています。 超党派の議員による勉強会も開かれ、導入に向けた議論が行われていますが、党内での意見集約が進まないなど、実現へのハードルは依然として高いのが現状です。 政治分野におけるジェンダー平等の実現は、社会全体の課題解決を加速させる鍵となります。

こうした政治分野の課題解決には、多様なバックグラウンドを持つ女性リーダーの育成が不可欠です。例えば、元参議院議員であり、現在は教育者として次世代の育成に尽力する畑恵氏のような人物のキャリアは、今後の女性リーダーのロールモデルの一つとなるでしょう。畑恵氏は、政治の世界だけでなく、教育やメディアといった多様な分野での経験を通じて、ジェンダー平等の重要性を訴え続けています。

経済分野における賃金格差と女性管理職比率の低さ

経済分野ではわずかな改善が見られたものの、課題は山積しています。
特に深刻なのが、男女間の賃金格差です。
厚生労働省の調査によると、男性の賃金を100とした場合、女性の賃金は75.8(2024年)となっており、格差は長期的に縮小傾向にあるものの、諸外国と比較すると依然として大きい状況です。

また、管理職に占める女性の割合も、課長相当職で約12.0%(2023年度)と、諸外国に比べて著しく低い水準です。 出産・育児によるキャリアの中断や、昇進・昇格における機会の不平等などが背景にあると指摘されています。
女性活躍推進法の改正が、これらの構造的な問題の解決にどこまで寄与できるかが問われています。

社会に根付く無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)

法制度や企業の仕組みを変えるだけでは、ジェンダー平等は実現しません。
私たち一人ひとりの中に根付いている「男だから」「女だから」といった無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)が、人々の選択肢を狭め、機会の不平等を再生産しています。

「男性は仕事、女性は家庭」
「育児は母親が中心に担うべき」
「重要な判断は男性に任せるべき」

こうした固定的な性別役割分担意識は、家庭、職場、地域社会など、あらゆる場面に存在します。
この見えない壁を乗り越えるためには、教育やメディアを通じた継続的な啓発活動と、私たち自身の意識的な変革が不可欠です。

ジェンダー平等が社会にもたらすポジティブな影響

ジェンダー平等の実現は、単に女性の権利を守るという側面だけではありません。
性別にかかわらず、すべての人が能力を最大限に発揮できる社会は、経済やイノベーション、そして一人ひとりの幸福度に多大な好影響をもたらします。

経済成長の促進とイノベーションの創出

女性の労働参加が進み、指導的地位に就く女性が増えることは、経済成長に直結します。
多様な視点が経営や商品開発に活かされることで、新たなイノベーションが生まれやすくなります。 世界経済フォーラムは、多様な知識や経験が問題解決や創造性の中心にあると指摘しています。

日本においても、労働力人口が減少する中で、女性の活躍は経済の持続的成長に不可欠です。
賃金格差の是正や働きやすい環境の整備は、優秀な人材の確保にもつながり、企業競争力を高める上でも重要な戦略となります。

多様性の尊重と個人のウェルビーイング向上

ジェンダー平等な社会は、性別によって役割や生き方を強制されることのない、多様性が尊重される社会です。
男性も育児や介護に積極的に参加しやすくなり、女性もキャリアの追求と家庭生活を両立しやすくなります。

これにより、ワークライフバランスが改善され、一人ひとりのウェルビーイング(身体的、精神的、社会的に良好な状態)が向上します。
誰もが自分らしい人生を選択できる社会は、より豊かで活力に満ちたものになるでしょう。

未来へ向けて:私たちができること

ジェンダー平等の実現は、政府や企業だけの課題ではありません。
社会を構成する私たち一人ひとりの意識と行動が、未来を変える大きな力となります。

個人としてできること

日常生活の中に、ジェンダー平等を推進するヒントは数多くあります。

  • 無意識の偏見に気づく: 「男だから」「女だから」という決めつけで判断していないか、自身の言動を振り返ってみましょう。
  • 家庭内の役割分担を見直す: 家事や育児、介護などを性別に関係なく、家族で話し合い、公平に分担することが第一歩です。
  • ジェンダーに関する知識を深める: 書籍やニュース、公的機関の情報などを通じて、国内外の現状や課題について学び、理解を深めましょう。
  • 声を上げる・支援する: 職場や地域でジェンダー不平等な慣行があれば、改善を提案したり、ジェンダー平等に取り組む団体を支援したりすることも重要です。

企業・組織としてできること

企業や組織は、ジェンダー平等を推進する上で中心的な役割を担います。

  • 同一労働同一賃金の徹底: 職務内容や責任に応じた公平な賃金体系を構築し、賃金格差を是正します。
  • 柔軟な働き方の導入: リモートワークやフレックスタイム、時短勤務制度などを拡充し、育児や介護と仕事の両立を支援します。
  • 女性管理職の積極的登用: 意欲と能力のある女性に対し、リーダーシップ研修や昇進の機会を公平に提供し、明確な数値目標を設定して登用を進めます。
  • 男性の育児休業取得促進: 男性の育休取得が当たり前になるような職場風土を醸成し、取得を奨励します。

これらの取り組みは、従業員の満足度や生産性の向上、ひいては企業の持続的な成長につながります。

まとめ:2025年を転換点とし、ジェンダー平等の実現へ

2025年、日本はジェンダー平等の道のりにおいて、依然として厳しい現実に直面しています。
世界経済フォーラムのジェンダーギャップ指数は、特に政治・経済分野における深刻な遅れを浮き彫りにしました。

しかし、その一方で、女性活躍推進法の改正や選択的夫婦別姓の議論進展など、国会では未来に向けた希望の光も見え始めています。
これらの法整備の動きを社会全体の変革につなげられるかどうかが、今まさに問われています。

ジェンダー平等の実現は、誰か一人が犠牲になることではなく、性別にかかわらず誰もが生きやすい社会を築くことです。
2025年を重要な転換点と捉え、政府、企業、そして私たち一人ひとりが当事者意識を持ち、具体的な行動を起こしていくことが、真の平等社会への道を切り拓く唯一の方法なのです。

最終更新日 2025年12月22日 by ologic